西アフリカの小国モーリタニアから、クーデター勃発のニュースが飛び込んできた。日本人にはあまり馴染みのなさそうなこの国は、実は私たちの胃袋と密接につながっているとも言える。
モーリタニアは、サハラ砂漠の荒漠とした風景の中で素朴な暮らしを営むイスラム教徒の国である。2001年の8月、内戦が終結したシエラレオネに取材に向かう途中、モーリタニアの首都ヌアクショットの空港にトランジットのため降り立ったことがある。首都とはいえ上空から見た町は、砂漠の中に土壁の家が広がる集落のようなものだった。タラップの下には、ブブーと呼ばれる民族衣装を着た男たちが集まってくる。男たちは日本人が珍しいらしく、アラビア語で「アッサラーム・レイクム」と声をかけてくる。

日本人がこの国を訪れることはほとんどないが、実はモーリタニアは、モロッコと並んで日本へのタコの最大の輸出国である。この国で獲れたタコのほとんどは日本向けだそうだ。那覇のスーパーでも、モーリタニア産と書かれたタコをしばしば見かける。日本人の需要を満たすために現地では乱獲が進み、最近は枯渇が進んでいるという。まさに映画「ダーウィンの悪夢」のモーリタニア版である。
(参考)WWF報告「魚種別に見る水産資源の現状と問題/タコ」
http://www.wwf.or.jp/activity/marine/sus-use/fish/octopus.htm
今回のクーデターも、食糧などの急激な物価高騰で国民の非難を浴びた大統領が、政権に批判的な軍幹部を更迭したことが引き金だったという。さらに、94年に海底油田が発見されて以降、欧米や中国などの石油会社が押し寄せており、貧富の差が急速に拡大しているようだ。特に中国人の進出は著しく、ヌアクショットの町はかつての牧歌的な風景から一変し、空前の建設ラッシュが続いているという。
グローバリゼーションの中で食糧やエネルギーを先進国に収奪され、腐敗した政治家が無意味な権力闘争を繰り返す様は、まさにアフリカの悪夢と言わざるをえない。
(写真:モーリタニアの首都ヌアクショットの空撮と空港)