イスラム過激派による武装警察官襲撃事件があった中国新疆ウイグル自治区で、日本のテレビと新聞の記者2名が当局に暴行を受けたという。北京オリンピックを3日後に控え、テロを防げない上に報道の自由をも侵害する中国政府の対応に、怒りと同時に不安を覚える。
記者たちは正規のIDを持ちテロ現場の近くで取材をしていたところ、警官に羽交い締めにされ地面に顔を押しつけられたり殴られたりした後、2時間あまりにわたって拘束されたという。まるでアフリカの独裁政権並みのメディア対応である。国内に巨大な矛盾を抱えながら、IOCと二人三脚で何とかごまかしながらオリンピックの準備を進めてきた中国だが、プレスセンターでのインターネット接続制限などその対応は大きな批判にさらされている。そんな中で起こったカシュガルでのテロ事件は、中国政府にとっては決定的な痛手となったことは間違いない。
事件があった新疆ウイグル自治区は、トルコ系のウィグル族が暮らす土地だ。歴史的に様々な王朝の支配下に置かれたが、1933年と1944年の2回、東トルキスタンイスラム共和国として短期間だが独立を果たしたこともある。国境地帯では、東トルキスタン独立運動と名乗るイスラム過激派組織が中国からの分離独立運動を続けており、5月には同団体がネット上で中国政府へのジハードを公式に宣言していた。
http://www.memri.org/bin/latestnews.cgi?ID=SD194708
東トルキスタンイスラム運動は、パキスタン・アフガニスタン国境に潜伏するアルカイダやタリバンとの関係も取りざたされているが、ウイグル族の支援組織はトルコ国内にも多数存在する。ユーラシア大陸の広範囲に暮らすトルコ系民族を団結させようという大トルコ主義の台頭がここ数年、著しいのである。
カシュガルでのテロ事件は、大トルコ主義と中華思想がユーラシア大陸のど真ん中で今まさに激突していることを如実に示している。
(画像:かつて存在した東トルキスタンイスラム共和国の国旗。トルコ国旗とデザインは同じだが、色が赤でなく空色)