去年11月3日、ダラムサラに滞在していた私は朝からいささか興奮気味だった。10月に米連邦議会から最高勲章を授与されたダライ・ラマ14世がこの日、市内で凱旋パレードを行うというのだ。
町の噂ではパレードは午後2時頃始まるとのこと。午前中から至る所に無数のチベット国旗が飾り付けられ、地面にはチョークで曼荼羅のような絵が描かれていく。様々な民族衣装で着飾った女たち、”チベットに自由を”のスローガンが書かれた旗を振る者。昼過ぎには沿道はダライ・ラマ14世を出迎えようという人々で埋まった。3時間以上待っただろうか。山の上にある寺の方角から、僧侶が吹くチベットホルン(ドゥンチェン)の地響きのような重低音が鳴り響き始めた。その魂を揺さぶるような轟然たる音色に、一瞬にしてチベット仏教の宇宙的で深遠な世界に引きずり込まれる。坂の上から、法王のものと思われる車列がパトカーの先導で下りてくるのが見える。歓声とドゥンチェンの響きが交錯し、音の洪水が通りを包む。何が何だか分からず夢中でシャッターを切る・・・
結果は、、、何も写っていなかった。言葉がない。もっと肉眼でちゃんと目に焼き付けておけばよかった。こんな局面でも写真を撮りたいいう自分の人間としての卑しさが露呈してしまった。以下の写真は、通りの反対側にいた相棒が撮った写真である。
車列が通り過ぎたのはほんの一瞬。法王は笑顔で人々に手を振っていたという。お姿は拝見できなかったが、ダライ・ラマ14世を慕う人々の熱狂の渦の中に身を置くことができたのはすばらしい体験だった。