ペシュメルガは掃討できない

ペシュメルガ(peshmarga)とはクルド語で、”死に直面する者”を意味する。トルコからの分離独立を求めるクルド人の反政府武装組織PKK(クルド労働者党)の戦士たちのことである。民族の悲願達成のために、全てを捨てて”山”に入った者たちのことである。

3年前の春、40日以上かけてトルコ南東部のクルド人居住地域を訪ねてまわったことがある。途中、”クルドの首都”とも言われるディヤルバクルの町で、元ペシュメルガの活動家に何人か会って話を聞く機会があった。彼らの多くは戦闘中にトルコ軍に拘束され、監獄ですさまじい拷問を受けたという。それでも信念を曲げることなく、出所後は地下に潜り政治活動を続けていた。一般の人々の分離独立志向も高まっていた。隣国イラクで、フセイン政権崩壊後にクルド人の勢力が拡大していることが、トルコに暮らすクルド人に”次は自分たちも”という気にさせているように感じた。何気なく入った絨毯屋で、従業員の若者とクルド独立の可能性について”小声で語り合う”というようなことを何度も経験した

そのクルディスタンが再び荒れつつある。金曜夜からトルコ軍はイラク北部に侵攻し、同地域を拠点とするPKK掃討を目的に越境攻撃を行っているという。トルコ軍の発表ではペシュメルガ22人殺害、トルコ兵5人死亡。PKKの発表ではトルコ兵20人殺害、16人拘束。両者の発表は食い違っているが、激しい戦闘が行われているのは事実のようだ。

クルディスタンはいま冬で、山々は雪に覆われている。なぜトルコ軍がこの時期に攻撃を行ったのか疑問だ。クルド人は山の民で、ペシュメルガは山岳ゲリラ戦を最も得意とする。トルコ軍兵士が白い迷彩服で行軍する写真が報道されているが、冬山での戦いはトルコ軍にとって極めて不利なはずだ。背景には、混乱するイラクで着々と権力基盤を固めつつあるクルド人勢力への牽制があると見られる。イラクのクルド人の勢力拡大が、トルコ国内のクルド人の分離独立感情に火をつけるのをトルコ政府は恐れているのだろう。

400年以上言葉も文化も奪われて暮らしてきたクルド人の民族自決への思いは今、ネブローズ(クルド人の新年祭)に焚かれる炎のように燃えたぎっている。その流れを止めるのは、強大なトルコ軍にとっても簡単ではないだろう。

(写真:ペシュメルガが潜伏するクルドの山々)

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