9.11から6年、果てしなき情報聖戦②

アルカイダの謎のメディア部門”アッサハブ”について調べを進めるため、主にパキスタン国内に流通している膨大なジハードビデオを集め始めた。そのなかの1枚のVCDに、アッサハブのビデオ作品がそのまま収録されていた。CDのディスク表面に販売元として印刷されていたのは、イギリスのバーミンガムの住所だった。手がかりを求めて2004年8月、バーミンガムに飛んだ。

イギリス中部の工業都市バーミンガムには、かつての英領インド西部(現在のパキスタン)から移民したイスラム教徒が数多く暮らしていた。移民街には白人の姿はなく、民族衣装に身を包み長い髭を生やした男たちが闊歩している。町のいたるところにモスクもある。

CDに印刷されていた住所を訪ねるとそこは、小さなイスラム書店だった。店内には宗教関連の書籍や説法テープなどがと所狭しと並べられていた。その中には、ビンラディンの演説ビデオや、チェチェンでのアルカイダの戦闘を描いた”ロシアンヘル”など、いわゆるジハードビデオも堂々と販売されていた。長髪に長い髭を生やした店主のイドリスは、パキスタン移民2世で生まれも育ちもイギリスだという。イドリスが完璧な英語で語るところによると、店は90年代後半に設立された。911後、最初の店主がアフガニスタンでの聖戦に参加し米軍に拘束されたため、自分が店を引き継いだという。定期的にアフガニスタンやイラクからビデオが匿名で届くため、それを販売しているという。現地のイスラム過激派と何らかのコンタクトがあるのは明らかだったが、イドリスは最後までアッサハブとの関係を否定した。一方で、アメリカを中心とする欧米諸国がイスラム教徒を苦しめていると訴え、侵略者と戦うビンラディンやアルカイダの考えには強く共感すると語った。

イギリス政府はアメリカと協調してテロとの戦いを進める一方で、国内に暮らすイスラム過激派の情報聖戦は野放しにしている実態が浮かび上がった。3年前のこの時点で、イギリス国内でイスラム教徒による大規模なテロはまだ起きていなかったが、いずれ深刻な事態が起きる可能性は容易に予測できた。そして2年後、50人以上が死亡したロンドンの地下鉄同時テロが起きる。容疑者のほとんどは、バーミンガムをはじめとする移民街の若者だった。この事件はイギリス政府に大きな衝撃を与え、以降アメリカとの協調路線に微妙な影を落とすことになる。

ジハードビデオは今も、世界中の貧しいイスラム教徒の若者たちを戦いに駆り立て続けている。イラクやアフガニスタンなどが泥沼化する中、アルカイダの情報聖戦はさらに激しさを増している。

(写真:金曜礼拝の後のバーミンガム中央モスク)

未分類カテゴリーの記事