知人が主催するイベントで、初めてアルメニア映画を観た。アルメニア出身のセルゲイ・パラジャーノフ監督が68年に発表した「ざくろの色」。旧ソ連体制下とは思えないほどひじょうに民族色の強い作品であることにまず驚かされた。
作品は18世紀のアルメニアの詩人、サヤト・ノヴァの生涯を描いた壮大な映像詩。台詞はほとんどなく、祝祭的な儀式や舞踏を独特の映像感覚で描いている一方で修道院が舞台で、アルメニア正教が主要なテーマにもなっていた。お酒を飲みながら観ていたので正確なストーリーは理解できなかったが、なんだかとても官能的というか気持ちよくなる映画だった。
アルメニアには行ったことがないが、アララト山を挟んで反対側のトルコ南東部のクルド人居住地域(クルディスタン)を訪ねた時に、古いアルメニアの教会を訪ねたことがある。ワン湖に浮かぶ島にあるその小さな教会は、10世紀にアルメニア正教の修道士たちが、人里を離れた島で誰にも邪魔されない祈りの日々を送るために建てたもので、質素ながら実に美しい教会だった。今は主のいないその教会の壁には銃弾の跡がいくつも見られた。この地にいたアルメニア人はオスマン帝国の迫害を受け、20世紀初頭にはトルコ政府によるアルメニア人虐殺が起こる。銃弾の跡はその時のものだという。
「ざくろの色」を観ながら、あの絵画のように美しく、物悲しい、アルメニアの教会を久々に思い出した。