
連日報道が過熱するバージニア工科大学銃乱射事件。犯人が韓国人だったことで、ネット上でも韓国バッシングが広がり、いやなムードが漂っている。そんな中、ひとつ心を打たれるエピソードが目にとまった。
教室に入ろうとする犯人を自分の体を盾にして止め、生徒に逃げるよう指示し続けた教授の話だ。教授の名はリビウ・リブレスク(76)、ルーマニア生まれのユダヤ人で、ホロコーストを生き延びた人物だ。78年にイスラエルに移住。航空工学の専門家だったリブレスク教授は、85年に有給休暇で訪れたバージニアが気に入り、大学に教職を得て妻とふたりで暮らしていた。
テルアビブに暮らす息子の話では、リブレスク氏は日頃から自らを「イスラエルの親善大使」と呼び、アラブ系の学生たちとの交流を大切にしていたという。研究肌の真面目な人物で、大学という場所を心から愛していたという。
奇しくも事件があった4月16日は、ホロコースト記念日。イスラエルやポーランド、ドイツなど世界各地で追悼式典が行われていた。5年前、エルサレムでこの日を迎えたことがある。テレビでは追悼番組が延々と流され、国中が喪に服し沈痛な空気に包まれていた。今なお、ホロコーストがユダヤ人にとって忘れ得ない恐怖の体験であることを実感したのを思い出す。
ナチスによる大量殺戮を生き延びた老教授は、皮肉にも60年の時を経て再び人類の狂気にさらされた。そんな自身の不遇に抗うこともなく、教え子を守ろうと命を投げ出したリブレスク教授の勇気ある行動が、民族や宗教を越えて世界の人々の共感を呼んでいる。