キンシャサの奇跡

モハメド・アリ
映画「モハメド・アリ~かけがえのない日々」をBSで久々に観た。この映画、これまでに何度も観ているのだが、今回もアリの圧倒的な存在感に、改めて度肝を抜かれた。

このドキュメンタリー作品は74年にザイールの首都キンシャサで行われたヘビー級タイトルマッチを克明に追ったもので、対戦相手のジョージ・フォアマンやプロモーターのドン・キング、ライブに出演するジェームス・ブラウンやB・Bキングなどいずれも豪華キャストである。

全米で公民権運動が吹き荒れる中、アリは黒人の抵抗運動の象徴でもあった。数少ない黒人の成功者として、アフリカの兄弟たちに連帯を呼びかける姿は、絶対的なカリスマ性を感じさせる。

試合は大方の予想を裏切ってアリのKO勝利。終盤、防戦一方だったアリが突如攻勢に転じるあたりは、呪術的な黒人女性シンガーの映像とフラッシュバックしながら劇的に編集されている。アリのボクサーとしての天才性をも巧みに表現している。

ところで、莫大なファイトマネーを支払い国際的な知名度を上げようとした当時の独裁者・モブツ大統領はその後クーデターで失墜している。ザイールはコンゴ民主共和国と名前を変えたものの長い内戦に突入、170万人もの市民が死亡したとも言われる。そのコンゴはことし7月、ようやく民主的な選挙を行い、選挙不正をめぐるドタバタ劇の末、先月ようやく暫定政府のカビラ大統領の当選が確定した。

70年代のブラックアフリカ運動の後、世界は再びアフリカから興味を失う。その間にアフリカでは民族紛争が激化し、その隙間を埋めるようにイスラム過激派が浸透していく。”キンシャサの奇跡”の舞台となった国がたどった運命を見るにつけ、90年代アフリカの”失われた10年”の重さを感じずにはいられない。同じ過ちが繰り返されぬよう、コンゴ民主共和国の”コンゴ”に注目していきたい。

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