
テヘランは慢性化した道路渋滞と大気汚染で悪名高い。
その最大の原因が国産自動車ペイカンだ。
60年代に英国メーカーとの合弁で生産が始まった国産大衆車は、イスラム革命以後は国営企業によって生産が続けられた。その間、外国車の輸入は著しく制限された。ペイカンは去年生産中止になるまで大きなモデルチェンジはなく、燃費は悪く排ガスもひどい時代遅れの車となった。今もテヘランの町を走っているとあちらこちらで故障したペイカンが立ち往生しているのを見かける。ある意味でテヘランの日常のひとこまとも言える。

イランが外資を排除しペイカンを国営化した背景には、イスラム革命の理念のひとつ、“自給自足”がある。アメリカの傀儡政権と言われたパーレビ王朝を打倒したホメイニ師は、西欧の帝国主義から自立するために国産の科学技術を強化し、工業製品の国産化を進めなければならないと主張したのだ。
今回、アフマディネジャド大統領が核開発問題で一歩も譲歩しないのもこうした思想の延長線上にある。大統領は去年の就任以来、イスラム革命理念への回帰を声高に主張しており、いくら欧米諸国が「必要な核燃料を供給しますよ」と口説いたところで無駄なのである。ウラン濃縮技術を自ら確立することこそ、イスラム革命の理念に沿った行動だからである。自らの固い信念に基づいて行動するアフマディネジャド大統領を説得しウラン濃縮を停止させるためには、国際社会は相当ねばり強い“交渉”もしくは“譲歩”を迫られるだろう。