昨日、アルカイダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ容疑者の声明ビデオがイスラム系ウェブサイトに出された。23日のオサマ・ビンラディン、25日のアブ・ムサブ・ザルカウィに続き、この1週間でアルカイダの3大幹部からメッセージが発されたことになる。それぞれの発言の要旨を取り上げ、声明から読み取れる事実を考察してみたい。
ビンラディンの発言の中で注目すべきは以下。
「ハマスへの欧米による資金援助停止は、イスラム教徒に対する十字軍戦争だ。」
「ダルフールにPKO部隊を派遣すれば、ただちに報復攻撃を行う用意がある。」
まず、”ハマス”や”ダルフール”など、現在進行中の国際問題を声明に取り込むことで、声明がごく最近録音されたものであることを証明し、自らの健在ぶりをアピールしている。また、パレスチナ総選挙で大勝したものの、”テロ組織”だとして欧米から援助を停止され八方塞がりになっているハマスへの連帯を打ち出すことで、イスラム世界での支持拡大をねらったと見られる。ダルフールへの言及も同じ文脈上にあると考えられる。ビデオではなく音声テープの形式を取っていることからは、依然、セキュリティ上の重大な不安を抱えていることが推測できる。

イラクでの対米テロの首謀者とされるザルカウィの注目発言は以下。
「ビンラディン師が提案している長期の停戦を、なぜアメリカは受け入れないのか?アメリカは自国民を騙しているが、米軍の士気は低く、イスラム戦死に怯えきっている。」
「イラクの傀儡政権を打倒せよ。シーア派も、シオニストのクルド人もイスラムに対する裏切り者だ。」
発言全体的に、強気なのか弱気なのか読み取りづらい声明だ。アメリカは今でもイラク国内のテロの9割以上がザルカウィの指揮下で行われていると主張しているが、もはやかつてほどの影響力はないとの指摘もある。今回の発言で、アメリカへの停戦を呼びかけているのも、その証拠とも読み取れる。イラクでの政治プロセスが進みつつあることに、ザルカウィが焦りを感じているのは間違いないようだ。シーア派を名指しで批判するのはこれまでと同様だが、今回注目すべきは、クルド人を”シオニスト”と非難し、敵視していることだ。北部の油田地帯キルクークをめぐっては、クルド人、シーア派アラブ人、トルクメン人などによる熾烈な抗争が続いているが、これにザルカウィらスンニ派過激派が加わると、さらに事態が悪化することが懸念される。

そして最後にエジプト出身のアルカイダ副官・ザルカウィ。
「イラクでこの3年間に800件の殉教作戦を実施し、米軍に打撃を与えている。」
「パキスタンの国民および兵士よ。裏切り者のムシャラフ大統領を打倒せよ。」
イラクでの自爆テロ攻撃を賞賛する部分ばかりが報道されているが、声明ビデオのタイトルは「パキスタン国民へのメッセージ」とあり、その大半が、ムシャラフ大統領を裏切り者だと非難し、その打倒を呼びかける内容だ。ザルカウィらアルカイダ幹部の多くは、今もアフガン=パキスタン国境の山岳地帯に潜伏していると見られており、米軍とパキスタン軍による掃討作戦が今も続けられている。ザワヒリの声明には、こうした攻撃でかなり追いつめられている心理も読み取ることができる。
以上のことから考察できるのは、安住の地を失ったアルカイダが、イラクやパキスタン国境地帯で厳しい戦いを強いられているのではないかということだ。こうした状況の中で、組織立て直しのために、新たな結束を呼びかけるための立て続けの声明だったのではないだろうか。しかし、以前から指摘しているように、
http://blog.livedoor.jp/eurasian/archives/391192.html
彼ら3人が追いつめられているかどうかは、もはや国際的なテロ活動の趨勢にはあまり関係ない。すでにアルカイダの理念は世界の隅々まで浸透している。一瞬にして世界に伝わるこうした声明は、自己増殖を続けている各地の細胞を動かすには十分な効果があるのだ。メディアは、アルカイダのメッセージを無償で世界中のイスラム戦士に伝える役目を果たしているも同然だ。アルカイダのメディア戦略は相変わらず周到だと言わざるをえない。