史上最悪のチェルノブイリ原発事故から、きのうで20年。
核エネルギーに依存する現代文明の危うさを知らしめた事故はすでに遠い記憶となり、世界は再び原発推進を加速し始めている。
チェルノブイリは旧ソ連ウクライナの北端、旧ソ連ベラルーシとの国境近くに位置する。このため放射能を含んだ灰は北風に乗って隣国ベラルーシや現ロシア本土にも降り注ぎ、原発職員や消防士ら約20万人、周辺住民数百万人が被爆した。現地では今も多くの住民がガンに苦しみ、症状はその後生まれた子供たちにも拡がっている。WHOはことし、被曝によるガンの最終的な死者数を、2065年までに1万6千人に達すると発表した。
一方、IAEA(国際原子力機関)は去年9月の報告書で、最終的な死者数を4000人と発表。被爆者や研究者から、”健康被害の過小評価だ”として批判を浴びている。その背景には、放射線の影響とガンとの因果関係の証明が難しいことに加え、チェルノブイリの負の遺産を”幕引き”し、原発建設を推進したい各国の思惑が働いていると見られる。
チェルノブイリ以降、世界的な趨勢となった脱原発の動きはもはや風前の灯だ。原油高騰、温暖化防止論議、中国・インドの台頭で伸びる電力需要などを背景に、世界は原発推進に一気に舵を切りつつある。世界第3位の原発大国・日本の原発メーカーも輸出攻勢を始めた。
あまり知られていないが、世界の5大原発メーカーのうち、3社が日本企業だ。
GE、仏アレバに続き、東芝、三菱重工、日立が名を連ねる。
しかし今年2月、業界地図が大きく塗り替える事件が起こった。
東芝が米ウェスティグハウス(WH)社を54億ドルという破格で買収に合意したのだ。正式に買収が成立すれば、東芝は世界ナンバーワンの原発メーカーに躍り出る。
ねらいは中国の原発市場だ。中国は2020年までに新たに30基の原発を新設する計画だ。この巨大な市場をめぐり、現在WH社とアレバ社が受注競争を繰り広げている。次なる市場インドに加え、アメリカやヨーロッパなど原発見直しが進む先進国も、今後は原発メーカーの主戦場と化すと見られる。
感情的な反原発論を述べる気はないが、昨日の現地でのセレモニーを見ていると、20年という節目で”区切り”をつけ、今後は後ろを振り返るのでなく、前向きに対処していこうという各国政府の発言が目立った。ベラルーシで、汚染地の安全性が今だ確認されていないにも関わらず、政府主導で農地復興が強力に推進されているのが典型的な例だ。
世界で進む原発推進の動きも、その安全性に関して、チェルノブイリの教訓が本当に生かされているのかどうか不安にならざるを得ない。