
「ラー・イラーハ・イッラッラー!(アラー以外に神はなし)」
腰布を巻いただけの半裸の男たち3人が、焼け付くような太陽が照りつけるコンクリートの桟橋をのたうち回りながら、狂ったように神への賛美を叫び続けている。
ムンバイ随一のイスラムの聖所、ハジ・アリ霊廟へ向かう桟橋で目にした光景だ。ここに祀られているハジ・アリは19世紀のムンバイ出身の富豪で、メッカ巡礼(ハッジ)から帰った後、全ての私財を貧者に寄付し、海岸で死ぬまで瞑想したと言われる。海岸から霊廟まで続く桟橋には、物乞いの群れが連なる。ハジ・アリが自ら実践してみせたイスラムの五行のひとつ、「喜捨」にあやかろうというわけだ。彼らの姿は、中産階級が急増するインドにあって、”貧困問題”が今も変わらず厳然と残っていることを改めて思い知らされてくれる。

ここでひとつ、意外な光景も目にした。霊廟にはイスラム教徒だけでなく、ヒンズー教徒も数多く訪れていた。ハジ・アリはイスラム教徒としてはもちろんのこと、その行いからヒンドゥー教徒からも偉人として絶大な尊敬を集めているのだという。
インドでは今、再び宗教間の対立が深まりつつある。きょう15日には、デリーにあるインド最大のモスク、ジャマ・マスジッドで爆発があり、少なくとも10名が負傷したという。3月にはヒンドゥー教の聖地、バラナシでもイスラム過激派によると見られる爆発があり、20名が死亡している。
ハジ・アリ廟の桟橋ののどかな光景からは、宗教間の対立は少しも感じられなかった。宗教の壁を越えて偉人を称えるハジ・アリ廟の例は、この多宗教国家においては稀なことなのだろうか。
(写真上:陸地から見たハジ・アリ廟 / 下:桟橋を行く巡礼者)
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