
イランを旅していて楽しいのは、モスクや霊廟など建築の美しさである。特にその細部に彩りを加えているのが、イスラム時代に発展したタイルだ。タイルには大きく分けて2種類ある。正方形のタイルに模様を彩色した絵付けタイルと、様々な色のタイルを刻み、パズルのように組み合わせたモザイクタイルだ。絵付けタイルではトルコのイズニックタイルが好きだが、今回、イランのモザイクタイルの美しさには目を奪われた。繊細な幾何学模様のモザイクが、巨大なモスクの壁面をびっしりと覆っているのである。その労力は想像すらできないが、神へのゆるぎない信仰心が気の遠くなるような作業を可能にし、それを芸術の域にまで高めているのだろう。ペルシア人の繊細な感性に敬服すると同時に、宗教というものが時に、人間の能力を未知の領域にまで導くものだということを改めて実感した。