放射能でつながる世界

2008041422-1

まもなく広島、長崎原爆の日。
福島第1原発事故が起きた今年は、
”核兵器のない世界”、”原発のない世界”を被爆地が宣言する歴史的な日となりそうだ。
いまや放射能という負のキーワードは、
ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ、セミパラチンスク、チェルノブイリ、ポリネシアなど、
世界を否応なく結びつけている。

6月、仏領ポリネシアのタヒチを訪ね、いちどは入国を拒否された。
その背景に政治問題がありそうだということは以前書いたが、
それはこの地域でかつて行われた核実験と大いに関係がありそうだ。

フランス政府では66年から96年まで、
ポリネシアのムルロア環礁、ファンガタウ環礁で、
200回におよぶ、大気圏核実験および地下核実験を行った。
フランス政府は従来、核実験に関する情報を国防機密としてほとんど開示してこなかったが、
96年の核実験終結以降、世論に押される形でIAEAへの委託調査の形で報告書をまとめている。
そして、「医学的に診断可能な健康への影響は現在もなく、また将来もあり得ない。放射線防護を理由とするいかなる矯正措置も必要ない」としている。

しかし、実際には実験センターで雇用された労働者や、近隣の島の住民に、
様々な健康被害が報告されている。
こうした被爆者たちが、86年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに声を上げ始め、
01年にポリネシア初の被爆者団体「モルロア・エ・タトゥ協会」を設立し、
08年には、白血病を発病したモルロア核実験場の元労働者8名が、
フランス政府を相手に補償を求める訴訟を起こしている。

ことし4月に自治政府大統領に再選出されたオスカー・テマル氏は、
広島の原水禁大会にも参加したことがあり、反核独立運動家として知られる。
04年に大統領に初当選してからは核実験の影響に関する独自調査を進め、
タヒチ本島を含む各地で放射性降下物を検出していた事実も暴き出した。
その後は親サルコジの対立候補と激しい政治闘争を続けている。
そして福島原発事故直後のことし4月の選挙で、大統領の座に返り咲いたというわけだ。

ある自治政府関係者は、
テマル氏の大統領就任に対するフランス本国の”いやがらせ”が、
私たちの入国拒否の背景にあるとする見方を披露してくれた。
テマル大統領は観光大臣も兼務する。
タヒチを紹介する取材クルーの入国を制限すれば、
観光に打撃になり、テマル政権は足元を揺さぶられるというのだ。
また、福島原発事故の直後だっただけに、
ポリネシアの放射能問題などへの取材と勘ぐられた可能性も否定できない。
フランスは世界有数の原発大国で、
そのころパリでは連日のように反原発デモが行われていた微妙な時期だったからだ。
いずれにせよ、正当な理由もなくジャーナリストの入国を拒否することは許されない。
いまだフランス政府から納得のいく説明はない。

福島原発事故をきっかけに、
世界の被爆地が改めて結びつこうとしている。
8.6、8.9はそのことを再認識する日となるだろう。

(写真:ムルロア環礁での核実験)

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