イラクを脱出するアッシリア人

ザファラン修道院イラクで教会を狙ったテロが相次いでいる。
狙われているのは、シリア正教を信仰するアッシリア人だ。

イラクの民族構成を説明する時に使われる常套句が、「南部のシーア派アラブ、中部のスンニ派アラブ、北部のクルド人」というものだ。しかし、イラクにはこれら3大勢力の他にも様々な民族や宗派が存在する。北部にはトルコ系のトルクメン人がいるし、クルド人の中にも”ヤズド”と言われるゾロアスター教徒の一派がいる。バグダッドには”ガジャル”と呼ばれるジプシーの血を引く民もいる。

アッシリア人も人口の5%に満たない少数派だが、実は彼らこそイラクの先住民族であり、古代オリエントを最初に統一したアッシリア帝国の末裔である。彼らが話すシリア語は、キリストが話したアラム語に最も近い言語と言われる。アッシリア人はキリスト教徒であると同時に、商才に長けていることで知られる。こうしたことも、混乱が続く現在のイラクでは大きな火種になっていると思われる。

シーア派、スンニ派、クルド人の3大勢力が権力をめぐり激しい争いを繰り広げる中、こうした少数派の現状は見過ごされている。アメリカが圧倒的な軍事力でサダム・フセインという”重し”を取り除いた途端、イラクは民族宗派が数の論理でぶつかりあう世界に一変してしまった。そして、そこには弱者の居場所はなくなってしまったのである。

イラク戦争後、教会への襲撃が頻発するにつれ、国外へ脱出するアッシリア人が後を絶たないという。ユダヤ人と並ぶ”ディアスポラ(民族離散)の民”と言われるアッシリア人の悲劇の歴史に、また新たな1ページが書き加えられようとしている。

(写真:トルコ南東部、マルディンにあるザファラン修道院での朝の礼拝。マルディンには今も多くのアッシリア人が暮らし、この修道院には1932年までシリア正教の総主教座が置かれていた。/去年4月撮影)

※シリア正教について詳しく知りたい方は以下のサイトがお薦めです。
http://www.sojp.net/index.html

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