同時多発テロから10年を経たニューヨークを訪ねた。
ニューヨークに滞在するのはなんと15年ぶりである。
ツインタワーのないマンハッタンのランドスケープには、
どことなく違和感とともに寂しさを憶えた。
今回ぜひ訪問したいと思っていたのが、グラウンドゼロである。
地下鉄で最寄の駅で下りたどり着いたのだが、整理券が必要とのこと。
ちょっと離れたところにある場所で整理券を入手して1時間後に見学できた。
いまやNYの名所として世界中から訪れる人が絶えないようだ。
2つのタワーが建っていた地面をくりぬいてプールにしたようなモニュメントで、
周囲の壁面に犠牲者の方の名前が刻まれている。
あえてシックな黒を基調とした抑制の効いたデザインだ。
厳粛かつ荘厳な雰囲気の慰霊碑はとてもすばらしい。
慰霊碑に刻まれた名前を見ることで、事件のリアリティに圧倒され、
10年前のあの悲劇に思いを馳せることができる。
多くの勇敢な消防士たちもここに眠っているのだ。
ただ少しだけ残念なのは、
この慰霊碑が、911の被害者としての側面しか語っていないことだ。
911を境に世界では様々な悲劇が起きた。
対テロ戦争での犠牲者をも同時に追悼し、
歴史を学べる場になればもっとすばらしいのだが。
来年ここに完成するという911記念館が、歴史を正しく伝える施設であることを願いたい。
悲劇の歴史をどう“モニュメント”で保存するのかというのは、
それぞれの国の知性と良心が問われる事業であり、
子供たちの正しい歴史認識にも重要だ。
私自身、“慰霊”をテーマにした作品制作を目指し、
すでに2年以上にわたり、沖縄の摩文仁で撮影を続けている。
戦争によって大量に人が亡くなった場所で、
人はどのようにその土地を浄化するのだろうか?
そしてどのようにその教訓を後世に伝えていけるのだろうか?
グラウンドゼロを訪ねてそんな思いに至った。