パリで「歴代沈壽官展」

 


パリの凱旋門を取り囲む12の館があります。
ナポレオン1世が戦功のあった将軍に与えたものといわれていますが、このうちのひとつを20年ほど前に三越が買い取り、日本美術専門のギャラリー「三越エトワール」として運営してきました。

世界的な不況の影響もありパリ三越がことし店を畳むことになり、残念ながらこのギャラリーも年内で閉館することとなりました。

その最後のプログラムとして今月から「歴代沈壽官展」が開催されています。
この展示会を撮影するため、10月1日から1週間パリに行ってきました。

沈壽官とは、鹿児島に伝わるやきもの、薩摩焼を代表する窯元です。
9月から、沈壽官窯の様々な営みを長期にわたり継続的に映像で記録させていただくという仕事に携わっています。その最初の大きなイベントがこのパリでの展示会でした。

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薩摩焼は、16世紀末の秀吉の朝鮮出兵に従軍した島津義弘が朝鮮半島から連れ帰った陶工たちが鹿児島で始めました。江戸時代には島津家の保護を受けるようになり、繊細な美術工芸品として発展しました。

幕末から明治にかけては特に隆盛を極め、欧州に大量に輸出されました。当時欧州では日本のやきもののことを「SATSUMA]と呼んだほどです。明治維新において活躍した薩摩藩の莫大な財力の源泉は、こんなところにもあったようです。象徴的なのは、明治維新前年の1867年のパリ万博に、薩摩藩は江戸幕府とは別に独自に参加し、薩摩焼などを大いに展示したということです。

それから150年。再び薩摩焼がパリに上陸しました。薩摩焼を保護した島津藩はすでにありませんが、現在の15代当主は歴史を守りつつも新たな息吹をも注ぎ込み、沈壽官窯を守り、そして進化させ続けています。

レセプションでのスピーチ。
15代のことばが印象的でした。

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「私は歴代の先達の苦労のうえに仕事をしています。今、このパリのギャラリーに、先祖たちがみな喜んで集まってきているような気がします。」

初代から15代までの名作を網羅した「歴代沈壽官展」は、
12月11日までパリの三越エトワールにて開催されています。
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(写真は、15代沈壽官によるギャラリートーク)

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